4年前と4年後と昨日と明日

今日は大学の合格発表があった。


ちょっとだけ研究室を抜け出して発表しているところを覗きにいったりして、

合格を決めた晴れやかな顔や、力及ばず視線を下に落とした顔に出会った。

4年前

4年前の3月8日。

特に前日の夜が眠れないということも無く、普段通りにこの日を迎えた。

そして母親の作った朝ご飯を食べて、学ランに袖を通し、鏡を見ながらワックスをつけて家を出た。


いつもと違っていたのは、

十三駅のホームに降りて、向いの京都線に乗ったこと。


慣れない京都線のせいか多少の乗物酔いを感じつつも、特にすることもなくひたすら窓の外を見ていた。


到着したのは11時40分。


すでに多くの人に埋め尽くされ、

寒空の下にも関わらずその熱気は手の平が汗ばむほどだった。


勧誘をしようと待機している人、

そわそわしながら板に張り出される紙を待っている人、

その隣で同じようにそわそわしている保護者の人。



僕自身もその中の一人であり、

早く張り出されてほしいような、ほしくないような、生温いお湯にたゆたっているような気分だった。



そんな中、白い紙を持った教員らしき人が歩いてきて、その場は一気にわき上がる。


紙を貼付け、その抑えている手をはらいのけ、数字の羅列が現れる。



悲鳴と、悲鳴と、悲鳴が混じり合うなか、



目が合ったように自身の番号を見つける。



......


そこから先は、お世話になった人に電話をしたり、

友人と抱き合ったり、

宙を舞ったり、

インタビューされたり。




あぁ、なるほど、あれからもう4年も経ったのか。

昨日

前日の追いコンの疲労を引きずって、昼過ぎに目が覚めた。

しなければならないこと、予定等を思い出しながら適当に引き出しから服を出して、寝癖を直して家を出た。


いつも通り、白川の坂を自転車で下って、

大学構内を通り抜けて研究室へ向かった。


いつも通り上着を脱ぎ、インスタントコーヒーを入れて、

自分のデスクに向かい、今度ある学会の資料を作った。


夕方からは友人の家に集まり、

近くの飲み屋で、卒業や新年会や何かたくさんの意味をつぎ込んだ飲み会をした。



どこの研究室はどうだ、

こういう研究は面白そう、

そろそろ就職の話も、

やっぱり安定志向?、

...

そろそろ帰ろうか。






周りにいる人も、

口にする物も、

口から出す言葉も、

思い描く未来も、

大きく変わってきたことに気がつく。



明日


明日もきっと、携帯の目覚ましを一度止めてからこたつで二度寝して、

焦って適当に引き出しから服を出して、寝癖を直して家を出る。


きっといつも通り、白川の坂を自転車で下って、

大学構内を抜けて研究室へ向かう。


そしてきっといつも通り上着を脱ぎ、インスタントコーヒーを入れて、

デスクに向かい、作業をする。





あぁ、でもそういえば明日はもう一つ用事があった。

新しいスーツを買いにいくんだった。

今度の学会のために、卒業式のために、大学院の入学式のために、

スーツを新調するのだ。





嘘みたいだけれど、当たり前だけれど、昨日の昨日の昨日の、を繰り返していけば4年前に繋がり、

明日の明日の明日の、を繰り返していけば、4年後に繋がる。

4年前の自分は今とは大きく違っていた。

この4年間、サークルに入り、授業を受け、旅行に行き、

様々な物を見、聞き、

それが自分を構成する成分となっていった。


明日に見るもの、聞くものも、明後日の自分の成分になる。




今日、あの晴れやかな顔を見せた新入生達が、今日の僕のようになる時、

僕はどのような顔を見せているのだろうか。








4年後

これはまた4年後にでも書くこととしよう。