なんとなく結婚という単語は別世界のことと思っていた。

先日、友人の結婚式があった。


4月の中頃に急に携帯に連絡が来て、突然の結婚報告を受けて学食で食事中の僕は驚いて声を上げてしまった。

友人とは小学校と中学校をともに過ごし、小学生の頃は同じチームで日夜白球を追いかけた仲。
個人的に遊ぶことはほとんどなく、卒業してからも会ったのは成人式くらいだったけれど、なぜかそれほど疎遠になっている気もしなかった。
それでも、今回呼ばれたのは少し意外で、非常に嬉しかった。


会場は大阪の南、りんくうタウンであるとのことだったので、前日のうちに実家に帰ってきていた。当日は朝早くからスーツで身を包んで阪急、関空快速を経由でりんくうタウンへ。
一週間も前からこの日は雨という予報で、前日も降水確率90%の予報だったにもかかわらず、南に走る電車の中から見上げる空は不穏な雲が漂いつつも、不思議と雨は一滴も降らずに時折日差しさえ差し込む時もあった。


一人でぼーっと外を見ながら、ipodから流れてくる「3月9日」が妙にしっくりきて、初めての結婚式への緊張も合わせて、何か気怠く温い湯につかっているような気分になった。


式場は所謂チャペルというところで、なにもかも初めての僕には非常に新鮮な場所だった。式場に着くと既に中学時代の友人が何人も集まっており、成人式以来の再会にテンションが上がった。相変わらず見た目はスーパーサイヤ人みたいな人もいたけれど、話を聞いてみると皆それぞれの場所でそれぞれの仕事をしているらしい。なんとなく、中学を卒業してから6年以上経ったことを今更ながらに実感した。


式では新郎である友人は緊張しっぱなしで、後ろ姿から肩が上がっているのが見て取れた。ちょっと笑った。新婦の方も非常に綺麗な人で、お互い少し恥ずかしそうな姿は見ていて非常に微笑ましくて、見ているこちらまで少し恥ずかしくなった。ベタなドラマみたいに途中で乱入してくる人もいなくて、無事に式は終わり、一同は外に出ていよいよブーケトス。取り合うのかと思っていたけど、意外とすんなり決まったみたいだった。でもなんとなく取った人が強そうだったのは気のせいのはず。


披露宴では友人や奥さんの今までの軌跡やら、なんやらを紹介し、もちろんお約束の上司のお言葉。
噂に違わぬ空気読めなさを垣間見せながらも、宴はゆるゆると続いていく。
柔らかいステーキに舌鼓をうちながら、少年野球時代にお世話になった友人の父親や母親に挨拶をしたり、中学時代の友人と昔話に花を咲かせたり。

中学、高校、そして大学へと進むたびに、様々な新しい友人と出会えて、日常も人間関係もどんどん変化して、昔のことは色あせたように思うけれど、振り返ってみたらそれは意外なほどに鮮明。
当たり前だけど、僕はこの友人達と6年前まで一緒に学校に通ってたんだよな。



宴も終わりに近づき、ウェディングケーキの幸せのお裾分けをもらって、最後は写真や映像を交えたエンドロールが流れる。
エンドロールが流れていくなかで、なんとなく、ぼーっと自分自身の人生も一緒に振り返ってみたりして。
自分と同じ学年だった友人が結婚をした。
また数年後にも別の友人が結婚するだろうし、恐らくいつか自分もするだろう。するのかな。
もし、するとしたら、その時の自分は、いったいどういう気分なんだろう、というとりとめのないことも考えたりした。
今まで実感はなかったけれど、今回でそれは当たり前に起こりうる現実なんだということを再認識した。



披露宴も終わり、外に出るとさっきまで晴れていた空は雨を垂らしていて、ギリギリもってくれてありがとう、とか思ったりして。
二次会には参加しなかったけれど、人生で初めての結婚式はとても貴重な経験だった。
幸せを祝いにいったら、お裾分けされてしまった。


どうか、二人がこれからも幸せでありますように。