SVCから帰ってきて。

思えば

去年の年末に、id:yaottiに誘われて参加したこのシリコンバレーカンファレンス
出発前は自分の中でこのツアーで「本当に自分は何か得ることができるか?」「何も感じませんでした、で終わらないか?」といった不安が常に頭の隅にあった。
正直に言うと情けないが、僕は今回のツアーに参加表明をしただけで何かしらビビっていて、関西組で相談した時や、毎日数通飛び交うメーリスに対してもどこか一歩引いた状態で眺めていた。


結局そんな状態のまま、ツアー当日を迎えた。

アメリカにて

出発当日がやってきて、前述した憂慮というよりかは、アメリカという初めて踏む土地に対する期待と不安が入り交じった気分の中、機内に乗り込んだ。

9時間のフライトを経て、テレビや地図の中でしか接することのできなかったアメリカの土地に降り立つ。空港を出て、レンタカーの窓を開けて胸いっぱいに吸ったアメリカの空気は少し暖かくて、見上げる空はどこまでも高く伸びていた。

バスケ漫画で言っていたような、「アメリカの空気を吸うだけで高く跳べるような気がした」というのも、あながちわからないでもない、と思ってしまった。

思ったこと(@アメリカ)

まず、ある程度僕の性格事情を知ってもらう方が説明に早いような気もするので、今回に必要っぽいものを挙げると、

    • 安定志向(大企業志向)
    • チャレンジ精神=平均×0.8 くらい。 平均とかよくわからないけれど。
    • 長いスパンでは楽観主義者。
    • 短いスパンでは悲観主義者、というか後ろ向き思考。

こんなことを正直に吐露するのも気が引けるけれど、僕は結構古いタイプの人間で、たまたま良い大学に入れたからというのもあるけれど、「良い大学→大企業」というルートが将来的に見ても一番良い選択だ、と思っていた。
そこにほとんど疑いすら持っていなかった。


その価値観が、この旅行では一気に揺るがされた。


完全スタートアップのDrop Boxや、スタートアップから規模の拡大途上のRock you、世界的大企業のAppleGoogle
ちょうど2月に学科の授業の一環で、日本を代表する大企業の一つであるPanasonic三菱電機を企業見学に行っていたことも手伝って、それは強烈な違いというものを感じた。

どんな違いか、と聞かれても上手く説明できないが、とりあえず何より前者に属する会社は非常に雰囲気が自由。
大企業のGoogleでも、というか大企業の方が、広大な芝生に立ち並ぶテーブルで仕事をしたり、遊んだりと、「会社」という言葉でくくるにはあまりにも自分のイメージを超えたものだった。

出発前後において梅田望夫さんや渡辺千賀さん、海部美知さんの著書を読んでいたので、シリコンバレーの会社やその地域の雰囲気はある程度知っているつもりでいたけれど、自分の想像力があまりに貧弱であったことを思い知らされた。


初めて見るシリコンバレーの空はどこまでも高く広く、そこで働く人々の生き生きとした表情。
もちろん、そこで生き残ることにおける厳しさも合わせて、確かにシリコンバレーは意欲ある人々を魅了しつづけるに足る場所であることを全身の感覚をもって感じた。

帰国直後

カンファレンスや企業訪問を始めとして、観光なども十分に楽しんで帰ってきた日本。

その直後に襲ってきたのは、強烈な劣等感だった。
正確には最終日付近からその症状は出ていたのだが、帰国して、色々思い返していて一気に吹き出した感じだった。

今の自分よりレベルの高い環境に身を置くことにより、大きく成長できる

これは確かに理解できるのだが、今回の環境は僕にとってあまりに別世界で、あまりにレベルが高すぎて、目がくらんで、足がすくんでしまった。
要するに、ビビってしまった。怖かったのだ。

仮にこのシリコンバレーに自分が来たとしてもちゃんとやっていけるのだろうか?
精神的にもかなり疲弊して、結局駄目になるんじゃないのか?
という疑問が、どうしても振り払えなかった。

「まだ大して努力もしてないやつがそんなこと言うのはただの逃げだ」、と言われても反論する気は全くない。確かにその通りだから。

そして、慣れない海外から日本に帰ってきた安心感も手伝って、
「日本で十分、というか日本の方が良い」、「スタートアップも良いけど、自分はやらないかな。。。」、「留学もちょっと。。。」、「そもそもシリコンバレーにくる理由とか無いやん」という、
海部さんの著書の「パラダイス鎖国」でも書かれていた、

パラダイス鎖国」の一番危険な点は、外部への興味を自らシャットアウトすることで、外の世界の情報と隔絶され、バランス感覚をなくすことだ。
その結果、自信を失って「引きこもり」になったり、極端に国粋主義者に走ったりすることがあり得る。

を見事に体現する結果となった。

それから

時差も少し治り、再びそれまでと同じような生活に戻って行くうちに、アメリカで感じたような高揚感や、帰国した時の劣等感などが上手い具合に自分の中で消化され始めてきたので、今現在思うことを綴ることにする。


こんなことを書くとせっかく企画してくださったJTPAの方々を落胆させるかもしれないけれど、嘘を書いたところでなんの得にもならないので正直に現在の思いとして残す。



僕は、やはりビビっている。
できない自分に直面することに、
今の環境を変えることに。

そこは自分でも前から分かっていたことだけれど、今回のツアーでより明確になって自分の目の前に突きつけられた。

そして、それは自分自身、変えなければならないと思っていたこと。しかし思っていただけで、結局なかなか変えられないでいる。


それでも、今まで「留学」や「海外で働く」ということは全く選択しには無かったけれど、今回のツアーで、「絶対に海外で勉強 or 働く!」とまでは行かないまでも、「あぁ、自分でもそういう生き方もできるんだ。」ということが、思っていた以上に自然と自分の選択肢に追加されたことに気がついた。

0であったものが、1になった。

それは、自分の中で思ってた以上に大きな変化であったかもしれない。



そして、今、僕は4回生になり先日第一志望の研究室に配属された。
その分野では世界的にも有名な教授のもとでこの一年間研究に励む。

今のところ留学は考えていない。
今あるこの環境で、やれるところまでやってみようと思う。
留学して得られるものは計り知れないものだろうけれど、この環境でしか得られないものもある。
留学が怖いから、という理由ではなく、能動的に自分から僕はこの環境で頑張ろうと思う。


もし、このツアーに参加していなくてもこの研究室に配属されて、同じようなスタートをきっていたはず。
しかし、ツアーを通して色々な世界を知ることで、そのスタートに置ける心構えが全く違うものであること感じる。
世界には、あれほどモチベーションの高い人が日夜努力している。
それを肌で感じれただけでも、この一年に対する姿勢はきっと違うはず。違うものにしたい。

思うに

冒頭で書いたような「何かを得ることができるか?」という憂慮はあまりにも意味の無い悩みであったことを感じる。
外に出て、外の世界を見て、何かを思い、何かを考える。
たったそれだけのことで、次に見る世界の色はまた変わってくる。
百聞は一見にしかずと言うけれど、今回のツアーでは千聞すらも一見に及ばないほど、毎日の各シーンが濃い意味を持っていた。
シリコンバレーで働く、学ぶなどに関してはまだ何とも言えないけれど、今回のツアーを経験したことによる日々の変化はとても大きい。
モチベーションの高い人を見続けて、自分と比べて腐ってしまうこともたまにはあるけれど、そこで腐って終わりではなく、また次の日にはもう一度持ち直すためのモチベーションにする。

ゆっくりでも良いので、「できない」と思うエネルギーを「できるために、少しでも行動する」為に使えるようになりたい。


焦らず、弛まず、怠らずに。




最後に、このようなすばらしいカンファレンスを企画してくださったJTPAの方々、
アメリカで行動をともにした関西組の方々、
そしていつも良い刺激をたくさん与えてくれて、今回のこのツアーにくるきっかけをくれたyaottiに最大限の感謝を込めて。